ラーメン職人の熱いストーリー ラーメン 東へ西へ

ラーメン東へ西へ No.69 らーめん大 清水 照久さん

”堀切系”を確立し、東京を中心に『らーめん大』(堀切系)を17店舗展開する清水照久さん。その原動力は、持ち前の調理センスと、尽きることのない好奇心だ。どん欲に情報を収集し、常に新しい味を求める。和洋のエッセンスを加えた創作麺の数々は、まさに好奇心の集大成だ。自らの可能性を追求する清水さんの今を切り取る。

東京から他県に初進出

2009年秋、一軒のラーメン店が福岡のラーメンフリークたちの話題をさらった。10月16日に福岡市・大橋に開店した『らーめん大 福岡大橋店』は、『らーめん大』で唯一、関東以外にある店舗だ。オープン日には大盛り野菜、極太ちぢれ麺、パンチの効いた濃厚スープで知られる「堀切系」の味を求めて長蛇の列ができた。豚骨ラーメンの聖地に一大旋風が巻き起こった。

らーめん大

魔法使いのような板前に憧れる

清水さんの原点は和食だ。母親の実家が旅館で、小学生になると、まとまった休みのたびに両親と泊まっていた。何よりの楽しみは、厨房を覗くことだった。板前の凛とした立ち振る舞い、次々とでき上がる料理を見ているだけでワクワクした。

「普段から目にする野菜や魚が見たこともないような美しい姿になっていくんですから、面白くて、面白くて。当時、僕の目には板前さんが魔法使いのように映っていました」

板前になりたいという思いは年を追うごとに強くなり、高校を中退して和食の世界へ。8年間の修行を積み、25歳で上京した。1990年代前半、日本は“イタメシ”ブームに沸いていた。イタリアンという未知の料理への好奇心から、清水さんは都内のレストランに就職する。

清水 照久さん

「その頃、『料理の鉄人』というテレビ番組で道場六三郎さんが和食をアレンジした創作料理を紹介していました。見ているとウズウズしてきて」

自身が培ってきた和食にイタリアンの技法を取り入れたオリジナルレシピを考案。すぐに評判となり、他店からもメニュー作成の依頼が舞い込むようになった。
5年働いた後、31歳で独立。開業資金を貯めるため、東京都・三鷹に10坪ほどのスペースを借りて弁当の移動販売を始めた。評判は上々で、売上げは順調にのびていった。何よりも自分の味が認められたことが嬉しかった。

奇想天外なラーメンとの出会い

ラーメン店をはじめるきっかけになったのは、濃厚な味と圧倒的なボリュームで知られる『ラーメン二郎』との出会いだった。『ラーメン二郎 吉祥寺店』(現在はラーメン生郎)に初めて立ち寄った際、衝撃を受けた。

「ラーメンとは思えませんでしたね(笑)。見た目、味、全てが今まで食べてきたラーメンの中でずば抜けて斬新でした。すっかり夢中になってしまいましたね。3回目に食べた数日後、無性に体が二郎の味を欲しがったんです」

33歳でダイニングレストラン『Pancia』を開業してからも、二郎には通い続けた。35歳、好調だった『Pancia』を立ち退きで閉めなければならなくなった際、真っ先に頭に浮かんだのが二郎のラーメンだった。

らーめん大

「ラーメン二郎という個性の固まりに、盛り付けの美しさ、女性やファミリーが利用しやすい清潔感が加われば、新たな需要を掘り起こせると思ったんです」

清水さんの作るラーメンは二郎の味に独自のアレンジを施したものだ。一時はラーメン二郎の暖簾で営業していたが、実際にはレシピを習ったわけでもなければ、修業したわけでもない。一度、厨房内を覗かせてもらえる機会があったので、伝票もちらっとみせてもらった。材料を集め、自分なりに再現して完成させたのである。女性客を意識して、本家に比べて塩分と脂分を減らした。スープとよく絡むよう、ストレートの極太麺をちぢれタイプに変える。量も若干抑え目だ。

好奇心こそ創作意欲の原動力

創業から6年は4店舗体制で営業。7年目以降、4年間で11店舗を出店した。急成長の最中でも、日々、味のブレが出ないように各店を回る。一つの小さなズレが、大きな歪みを生むのを知っているからだ。
今では『らーめん大』を軸に、イタリアンベースの創作料理を提供するダイニングバー『Pancia』など業態の異なる飲食店も手掛ける。『麺処 讃岐うどん 旬食 糀や』では、自家製のうどん麺をラーメンのスープと合わせる「饂麺(ウーメン)」を提案。独自性が話題となり、多くのマスメディアに取り上げられた。アジア各国の料理が味わえる『麺香房 天照』では、濃厚な醤油ラーメンをはじめ、牛すじを使った塩ラーメン、担々麺や味噌ラーメンなど多彩な麺料理を作り出す。和食、イタリアンの世界を経験してきた清水さんのラーメンに、ボーダーラインはない。

「斬新なアイデアを思いついたり、未知の食材に出会ったりするとすぐに料理してみたくなるんです。作ったら誰かに食べさせたくなる。そんな単純明快な思いが僕を突き動かしているんです」

(取材・撮影・執筆・編集/力の源通信編集部)


らーめん大 堀切本店
住所:東京都葛飾区堀切4-57-14 カネコビル1F
TEL:03-3602-7073
定休日:無休
営業時間:11:30〜3:00(※材料切れ次第終了)

らーめん大 福岡大橋店
住所:福岡県福岡市南区大橋2-12-13
TEL:092-561-6611
定休日:無休
営業時間:11:30〜3:00

らーめん大

らーめん大

らーめん大・清水 照久


らーめん大
清水 照久
(しみず・てるひさ)

昭和36年7月、鳥取県で生まれる。4/9にオープンする東京・平井店をはじめ、現在、『らーめん大』(堀切系)17店舗を展開。各店で見られる「当店のラーメンは3回食べてみてください。」というフレーズは自身の体験に基づく。今後はラーメン同様、あえ麺やつけ麺も掘り下げていく予定だ。趣味はゴルフと食べ歩き。食べ歩きでは、ラーメン店を中心に様々なジャンルの飲食店を開拓。